SEVEN STAR

スペシャル

back
INTERVIEW

原作・堀江信彦×監督・鹿住朗生インタビュー

「北斗の拳」は「スター・ウォーズ」であり「男はつらいよ」だった?原作・堀江信彦×監督・鹿住朗生が語る新たな救世主伝説

「北斗の文句は俺に言え!」。

時の権力者を相手に、タバコをふかしながら啖呵を切る大胆不敵な性格。かと思えば、恋人や朋友との約束を守り通す信念の男。一子相伝の北斗神拳で、邪魔するヤツは指先ひとつで一撃必殺。それが『蒼天の拳』で描かれている主人公、第62代北斗神拳伝承者の霞拳志郎(かすみ・けんしろう)だ。

ところが4月より放送中のTVアニメ『蒼天の拳 REGENESIS』では、そんな無敵の男の「死」が描かれるという。映像制作は『シドニアの騎士』や劇場アニメ『亜人』、アニメーション映画『GODZILLA』を手がけているポリゴン・ピクチュアズ。3DCGを駆使した未知なる北斗サーガは、いよいよ中盤へと差しかかろうとしている。

本記事では、原哲夫先生と共に原作を手がけているノース・スターズ・ピクチャーズ代表取締役の堀江信彦さんと、アニメ監督を務めている鹿住朗生さんに突撃取材。今回のアニメ化の舞台裏から、『北斗の拳』シリーズの真なる構想まで、たっぷりとお話をうかがった。

 

■『北斗の拳』は世代を超えた大河ドラマ

――原作マンガ第1部が描かれたのは2001~2010年。また2006~2007年にはTVアニメも放送されました。その『蒼天の拳』が2018年になって、『蒼天の拳 REGENESIS』として再びアニメ化されたのは、どんな理由があったのでしょうか?

堀江信彦(以下、堀江):
『北斗の拳』を連載していた当時から「この物語を『スター・ウォーズ』みたいなシリーズにしたい」と思っていたんです。
つまり終わりがなくて、北斗神拳が日本に渡ってきたときや戦国乱世、またはシンギュラリティが到来した未来……さまざまな時代の中で、北斗神拳の命脈がどう受け継がれ、その時の伝承者たちがどんな人生を送ったのか。これを描き続けたいと思っていた。『北斗の拳』は世代を超えた大河ドラマなんですよ。

そうなると、アニメ化というのは単なるタイミングの話に過ぎなくて、今回ありがたいことに鹿住監督やポリゴン・ピクチュアズさんをはじめ、制作スタッフの方々のタイミングがちょうど上手く合致した。
前回のアニメが途中までしか描いていなかったので、いつかケリを付けたいという気持ちもありましたが、今回再びアニメをやろうと決めたときに「じゃあ思う存分につくってやってもらおう」と思って、最大限のサポートをさせていただきました。

鹿住朗生監督(以下、鹿住):
初めて監督の話を頂いた時は、「まさか自分が『北斗の拳』のシリーズに参加できるなんて!」と本当に驚きました。
僕がポリゴン・ピクチュアズのプロデューサーから「監督やらない?」と誘われたのは、同社の『亜人』で各話演出をしていた2015年頃です。それから堀江さんや原哲夫先生をはじめ、原作サイドのみなさんと一緒に、3年かけてじっくりと制作を進めてきました。

――今回、やはり注目を集めたのはポリゴン・ピクチュアズが3DCGアニメーションで『蒼天の拳』を描く、ということでした。とてもチャレンジングな試みだと感じたのですが、その点はいかがですか?

堀江:
非常に野心的で、面白いなと思いました。なにより『北斗の拳』を読んで育った若い世代の人たちが作ってくれていることも嬉しかった。僕や原くんにとっては、『北斗の拳』を生んで育てて、いよいよ誰かに伝承してもらう時期が来ていたわけです。
いつも楽しみながらアニメを観ているんだけど、拳志郎たちが鎧のような筋肉をちょっと邪魔くさそうにしながら闘っている様子も妙にリアルで。「たしかにそうだよなあ」って頷きながら観ました(笑)。本物の「筋肉アニメ」を楽しんでもらいたい(笑)

鹿住:
そう言っていただけてすごく嬉しいです。ポリゴン・ピクチュアズとアニメを作るにあたって、3DCGでどうやって『蒼天の拳』を描くのか、という点はすごく考え抜いたところです。
原先生によるキャラクターはすごく緻密な線で描かれているので、セルルック調でどう見せられるか試行錯誤を重ねながら、ひとつずつチェックしながら付けた動きでもあります。当時、『亜人』でも取り入れていたモーション・キャプチャーも非常に参考になりました。

堀江:
今回のアニメを観ていると、改めて「『蒼天の拳』は今の時代と匂いの違う作品だな」と思いました。
僕も『君の名は。』のように話題となった作品はチェックしているけど、『蒼天の拳』だって拳志郎と(潘)玉玲のラブラブ生活を描いたコメディのほうが受けるんじゃない?って。「今日何食べる?」ってかけ合いながらさ。その方が今の潮流に合っていると思うんですよ。

――(笑)。たしかにその企画もコミックゼノンさんの漫画でぜひ読みたいです。

堀江:
じゃあそれでスピンアウトを考えてみようかな(笑)。
でも映像にしろ漫画にしろ、やっぱり流行っているものだけをやっていては前に進めない。『蒼天の拳』みたいにバイオレンスで獣じみていて、タバコもバンバン吸うような作品は、今の時代には合わないかもしれないけど、挑戦してみて良かったなと思えました。

 

■「格」と「格」のぶつかり合い。それがキャラクターの生き様になる

――『蒼天の拳』、あるいは『北斗の拳』では、常に戦う男たちの生き様が描かれていますが、堀江さんの考える「男の美学」はありますか?

堀江:
北斗神拳はつまるところ格闘技ですが、格闘技って要するに「格」と「格」の戦いなんです。だから「格」の高いキャラクター同士が戦えばカッコいいし、自ずとドラマも生まれるんです。
『蒼天の拳』は原くんと僕が原作を書いているんだけど、いつも「キャラクターたちの格をどう上げるか」を考えながら物語を作っています。

格闘技は、戦う者同士が対峙するだけで、どちらが勝つのか察してしまう瞬間があると言います。 だから勝つためには格を高めなくてはいけない。
そこを愚直にやり通して、格を高めて、死ぬかもしれない戦いに挑むという姿がカッコいいなと思うわけです。

鹿住:
『蒼天の拳』はすべての登場人物にしっかりと格がありますよね。言ってみれば信念みたいなもので、男だけでなく女性や子どもキャラクターにもちゃんと感じられる。
玉玲には大人の格が、エリカには子どもの格があって、それぞれのベクトルで人生をどう生きるかが描かれていると思いました。

――たしかに、拳志郎の「北斗の文句は俺に言え!」という決めゼリフの中にも、すべてを背負おうとする度量の広さや信念が感じられますね。

鹿住:
あのセリフって堀江さんが考えたそうですね。

堀江:
ええ、これにはある実体験があって(笑)。ある日、電車を降りるときに前の人の靴を踏んで、脱がしちゃったことがあったんですよ。しまった、と思って「すみません」と謝ったんだけど、その人には聞こえなかったようで「オイ、謝れよ!」と絡んできて。しかもある会社の偉い人で、名刺を出して凄んできた。

僕もカチンと来たから「へえ、偉いんですね。ご自分の立場で人を脅すんですか?」って言い返したら「お前みたいなやつの親の顔が見てみたい」って言うんですよ。それでつい「文句は俺に言えよ!親は関係ねえだろ!」と(笑)。それを原くんにしゃべったら、「堀江さんそれ良いですよ!」って採用しちゃって。

――すごい武勇伝ですね。まるで堀江さんが拳志郎じゃないですか(笑)。いつ頃のお話ですか?

堀江:
あれはいつだったのかな? 『蒼天の拳』の前の『公権力横領捜査官 中坊林太郎』とかのころだから1990年代の……。

鹿住:
ひょっとして199X年ですか?

堀江:
(笑)。じゃあ僕は核の炎じゃなくて、偉い人のかかとを踏んだわけだ。


インタビュー完全版はコチラ!

c原哲夫・武論尊/NSP 2001,c蒼天の拳 2018

ページトップへ